第4回:生成AIって安全なの?個人情報の扱いは?著作権は?注意したい問題点

生成AIと個人情報保護

AI(人工知能)が私たちの生活に深く関わるようになるにつれて、「AIって安全なのかな?」「個人情報とか大丈夫なの?」といった不安を感じる方もいるかもしれませんね。ニュースでAIの怖い話を聞いたりすると、特にそう思いますよね。

でも大丈夫!このページでは、AIを安心して使うために「これだけは知っておきたい」大切な注意点を、AI初心者の方にも分かりやすく解説していきます。AIの仕組みやできることが分かってきたら、今度は賢く、安全に使うための知識も身につけていきましょう。

1. AIは「完璧な存在」じゃない!過信は禁物

AIはとても賢く、たくさんのことをこなしてくれますが、決して「なんでも完璧にこなす魔法の箱」ではありません。ここが最初の大きなポイントです。

1-1. AIは「間違える」ことがある

AIは学習データに基づいて判断や生成を行います。そのため、学習データに誤りがあったり、偏りがあったりすると、AIも間違った情報を出力することがあります。例えば、

  • テキスト生成AI
    事実と異なる情報を自信満々に生成してしまう「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象が起こることがあります。まるでAIが嘘をついているかのように感じるかもしれませんが、これは学習データから推測した結果がたまたま間違っていたり、関連性の低い情報を無理に結びつけようとしたりすることで発生します。
  • 画像生成AI
    指示した通りの画像を生成できない、人間にとっては不自然な(指の数が多かったり、左右対称がおかしかったりする)画像を生成してしまうことがあります。

実際に生成AIを利用してみると、ごく簡単な数式というか一桁の足し算を間違えていたことや、出力してきた日本語文章にロシア語やハングル語が混じる、論理が逆転しているなどなどに遭遇することがありました。その時点で気がついたから良いようなものの、そのまま使用していたら誤りを誤りのまま広めてしまうところでした。。

どんなに高性能なAIでも、間違いをゼロにすることはできません。AIが生成した情報は、鵜呑みにせず、必ず自分で「これは本当かな?」と確認する習慣をつけましょう。

1-2. AIは「最新の情報」を知らないこともある

特にインターネット上の最新情報をリアルタイムで学習していないAIの場合、情報の鮮度が古く、現時点では正しくない情報を提供する場合があります。例えば、最新のニュースや、ごく最近発表されたデータについては、AIが知らないこともあります。 AIに何か質問する際は、いつの時点までの情報を学習しているのかを確認することも大切です。

2. 個人情報の取り扱いは特に慎重に!

AIを使う上で、最もデリケートな問題の一つが「個人情報」の扱いです。
AIに個人情報や機密データを安易に入力してしまうと、いくつかのリスクが発生してしまうことがあります。

2-1. AIに個人情報や秘密の情報を安易に入力しない

例えば、ChatGPTのような対話型のAIに、会社の秘密情報や顧客の個人情報、自分の銀行口座情報などを入力するのは絶対にやめましょう。なぜなら、AIサービスによっては、入力されたデータをAIの学習に利用する場合があるからです。

もし学習に利用された場合、他の誰かが似たような質問をした際に、あなたの入力した情報の一部がAIの回答に混じって出力されてしまう、という可能性もゼロではありません。

  • 対策:
    • AIに個人情報や機密情報を入力する際は、そのAIサービスのプライバシーポリシーや利用規約を必ず確認しましょう。
    • 心配な場合は、入力前に個人情報(氏名、住所、電話番号など)を特定できない形に変換(匿名化)したり、そもそも入力しないように心がけましょう。
    • 多くの生成AIサービスでは、入力したデータを学習に利用しない設定(オプトアウト)が提供されています。もしビジネスで利用する可能性がある場合は、この設定を必ず確認し、有効にすることをおすすめします。

2-2. 生成されたコンテンツに含まれる個人情報にも注意

画像生成AIなどでは、意図せず他人の顔や個人を特定できるような情報が含まれた画像を生成してしまう可能性も考えられます。SNSなどに公開する前には、必ず内容を確認し、問題がないことを確かめましょう。

3. 著作権の問題も知っておこう

AIが生成した画像や文章には、著作権の問題が絡むことがあります。
AIが生成した画像や文章に著作権の問題が絡むのは、現行の著作権法が「人間の創作活動」を前提に作られているためです。

AIは、既存の大量のデータ(画像や文章など、多くは著作物)を学習し、そのパターンを基に新たなコンテンツを生成します。このとき、

  1. 学習行為が著作権侵害にあたるか? 学習のために既存の著作物を利用する行為が、複製権などの著作権を侵害するのかという点が、多くの国で議論されています。
  2. 生成されたコンテンツの著作権は誰のものか? AIが「自動的に」生成したコンテンツについて、AI自身に著作者としての権利が認められるのか、あるいはAIに指示(プロンプト)を出した人間に著作者の権利があるのか、その線引きが明確ではありません。特に、AIの関与度が高いほど、人間の「創作性」がどこまで認められるかが曖牲になります。

このように、AIによる創作活動が従来の「人間が創作する」という枠組みに収まらないため、既存の法律では明確な判断が難しく、世界各国で法整備やガイドライン策定が急ピッチで進められている状況です。

3-1. 学習データに含まれる著作物

AIは既存の画像や文章を大量に学習して新しいものを生成します。この学習データの中に、著作権で保護されたものが含まれている場合、生成されたコンテンツが元の著作物と似てしまい、著作権侵害となる可能性が指摘されています。

  • 対策:
    • 生成AIで作成したコンテンツを商用利用したり、公開したりする場合は、そのAIサービスの利用規約やガイドラインをよく確認しましょう。
    • 特に営利目的で利用する場合は、著作権に関する専門家の意見を聞くことも検討してください。

3-2. 生成物の著作権

現時点では、AIが完全に自律的に生成したコンテンツの著作権が誰に帰属するのか、法的な整備が追いついていない部分があります。日本では、AIが生成したものであっても、そこに人間の「創作的寄与」があれば、その人間が著作者となるという考え方が一般的です。

しかし、これもケースバイケースであり、今後の法整備や判例によって解釈が変わる可能性もあります。

4. 悪意のあるAI利用にも警戒を

akuiのあるAI利用

残念ながら、AIは良いことばかりに使われるわけではありません。悪意のある人間がAIを悪用する可能性も指摘されています。

  • フェイクニュースやディープフェイク: AIを使って、あたかも本物のように見える偽のニュース記事や、実在の人物が言っていないことを言っているかのように見せる偽の映像(ディープフェイク)が作られることがあります。
  • 詐欺やフィッシング: AIが生成した巧妙な文章を使って、詐欺メールやフィッシングサイトが作成されることもあります。

このような情報に惑わされないためには、情報源を常に確認し、安易に信じ込まないという「メディアリテラシー」が非常に重要になります。少しでも怪しいと感じたら、すぐに信用せず、冷静に判断する目を養いましょう。

悪意のあるAI利用の具体例:YouTubeの「有名人なりすまし投資詐欺動画」

最近、YouTubeやSNSで「この有名人が勧める投資なら安心!」と思わせるような、巧妙な投資詐欺動画が問題になっています。実はこれ、生成AIが悪用されている典型的な事例なんです。

1. 偽の投資案内動画の仕組み:AIが「なりすまし」を可能にする

これらの詐欺動画は、以下のような手口で視聴者を騙そうとします。

ディープフェイク技術による「なりすまし」

最も悪質なのが、ディープフェイクと呼ばれる生成AI技術の悪用です。これは、特定の人物の顔や声をAIに学習させることで、その人物がまるで実際に話しているかのような動画を生成する技術です。

  • 顔のなりすまし: 有名人の顔の特徴をAIが学習し、別の人物(詐欺師が用意した役者やAIが生成した架空の人物)の顔と入れ替えることで、あたかも有名人本人が動画に出演しているかのように見せかけます。表情や口の動きも非常に自然に再現されるため、一見しただけでは偽物だと見抜くのは非常に困難です。
  • 声のなりすまし: 有名人の声をAIに学習させ、その声で詐欺の内容を語らせます。声のトーンや話し方の癖まで再現されるため、本物と区別がつきにくい場合が多いです。

これにより、普段テレビやメディアで見かける有名人が「絶対に儲かる投資話がある」「私自身もこれで大儲けしている」などと語りかける動画が生成され、視聴者は「あの人が言っているなら間違いないだろう」と信じ込んでしまうのです。

AIによる巧妙な台本とシナリオ生成

動画内で語られる投資話の内容も、生成AIが大きく関わっています。

  • 説得力のある(ように見せかける)文章: ChatGPTなどの文章生成AIは、あたかも専門家が書いたかのような、もっともらしい投資話の台本を生成できます。専門用語をちりばめたり、経済状況に触れたりすることで、内容に信憑性があるかのように錯覚させます。
  • 心理を突く誘導: 「今だけ」「人数限定」「あなただけに特別に」といった、人の射幸心や限定感を煽る言葉、また「早くしないと乗り遅れる」といった焦りを生む言葉をAIが効率的に生成し、視聴者を巧妙に誘導します。

これらの要素が組み合わさることで、視聴者は有名人の言葉を信じ込み、その裏にある詐欺の意図を見抜くことが非常に難しくなってしまいます。

2. 詐欺の手口:甘い言葉の先に待つもの

これらの偽動画を見た視聴者が興味を持つと、以下のような段階で詐欺に引き込まれていくのが一般的です。

  1. 別の連絡手段への誘導: 動画内で「詳しくはLINEの公式アカウントで」「限定のコミュニティにご招待」などと誘導し、YouTubeのプラットフォーム外での接触を促します。
  2. 個別相談やセミナーへの誘い: LINEなどでのやり取りを通じて、「専門家による個別相談」や「無料セミナー」と称して、より詳しい話を聞かせようとします。
  3. 高額な投資の誘い: 最終的に、実態のない投資話や架空の金融商品への投資、あるいは投資に関する高額なコンサルティング費用などを請求してきます。多くの場合、初回は少額の利益を偽装して信用させ、その後、より高額な投資を持ちかける手口が使われます。
  4. 連絡の途絶と金銭の詐取: お金が振り込まれると、連絡が途絶え、被害者は投資したお金を取り戻せなくなるという結末を迎えます。

3. 被害が拡大している背景

このような詐欺被害が拡大している背景には、いくつかの要因があります。

  • 生成AIの進化と普及: ディープフェイク技術の精度が向上し、一般の人が利用できるツールも増えたことで、悪意を持った個人でも容易に偽動画を作成できるようになりました。
  • SNSや動画プラットフォームの普及: YouTubeやTikTok、FacebookなどのSNSプラットフォームは、不特定多数にリーチできるため、詐欺動画を拡散する温床となっています。
  • 情報リテラシーの格差: 生成AIに関する知識や、インターネット上の情報の真偽を見抜く力がまだ十分に浸透していないため、多くの人が騙されてしまうリスクがあります。
  • 有名人の肖像権や信用力の悪用: 普段から親しみを感じている有名人が登場することで、心理的なハードルが下がり、警戒心が薄れてしまう傾向があります。

悪意のある生成AI利用の一例を解説しました。
生成AIは私たちの生活を豊かにする素晴らしい技術ですが、その光と影の両面を理解し、賢く付き合っていくことが、これからのデジタル社会を生きる上で非常に重要になります。

まとめ:AIと賢く付き合うための心構え

AIは私たちの生活を豊かにする素晴らしい道具ですが、使う私たち自身がその特性や注意点を理解しておくことが大切です。

  • AIを過信しない: AIの答えは常に正しいとは限りません。最終的な判断は自分で行う。
  • 個人情報を守る: 安易にAIに入力しない。
  • 著作権を意識する: 生成物を公開・利用する際は規約を確認する。
  • 情報を鵜呑みにしない: 偽情報に惑わされない目を養う。

これらのポイントを押さえておけば、AIをより安全に、そして賢く活用することができます。AIは決して怖いものではなく、私たちの「お助け役」です。正しい知識を持って、AIとの付き合い方を楽しみましょう!

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