
前回の記事では、ChatGPTをはじめとする生成AIとの「おしゃべり」の始め方を紹介しました。「生成AIって意外と簡単に話せるんだ!」と感じた人もいるかもしれませんね。
でも、生成AIは人間のように「言わなくても分かってくれる」わけではありません。生成AIにあなたが望むような答えや文章、アイデアを出してもらうには、生成AIに対して上手に「お願い」をする必要があります。
この「お願い」の言葉、専門用語では「プロンプト(Prompt)」と呼びます。このプロンプトの書き方ひとつで、生成AIが出す結果は大きく変わってきます。まるで魔法の呪文のように、プロンプトを使いこなせれば、生成AIはあなたの強力な「お助け隊」になってくれますよ!
今回は、生成AI初心者さんに向けて、プロンプトの基本的な書き方のコツを分かりやすく解説していきます。「なんだか難しそう…」と思うかもしれませんが、基本の「キ」を押さえれば大丈夫!今日からあなたもプロンプトマスターへの第一歩を踏み出しましょう!
1. プロンプトは生成AIへの「指示書」
プロンプトは、あなたが生成AIに何を求めているのかを伝えるための「指示書」のようなものです。人間同士の会話では、曖昧な言い方でも相手が意図を汲み取ってくれることがありますが、生成AIに対しては、具体的で明確な指示をすることが大切です。
たとえば、人に「何か面白い話をして」とお願いしても、相手はあなたの興味や状況に合わせて話を選んでくれるかもしれません。しかし、生成AIに同じように「何か面白い話をして」とだけ伝えても、的外れな話が出てきたり、期待するような反応が得られないことが多いでしょう。
生成AIにあなたの意図を正確に理解してもらい、期待するアウトプットを得るには、プロンプトで**「誰に」「何を」「どのように」**してほしいのかを具体的に伝える必要があるんです。
2. 基本の型を覚えよう!5つの要素

効果的なプロンプトを書くための基本的な型として、以下の5つの要素を意識してみましょう。これらを組み合わせることで、生成AIはあなたの意図をより深く理解し、的確な回答を生成しやすくなります。
要素1:役割(Role)
生成AIに特定の役割を演じてもらうことで、より専門的で質の高いアウトプットが期待できます。例えば、「あなたはプロのコピーライターです」と伝えることで、AIはその視点に立って提案を考えてくれます。
- 例:
- 「あなたはプロのコピーライターです。商品のキャッチコピーを3つ提案してください。」
- 「あなたは小学校の先生です。子供にも分かりやすいように、地球温暖化について説明してください。」
- 「あなたは優秀な料理研究家です。冷蔵庫にある食材を使ったアイデアレシピを提案してください。」
要素2:タスク(Task)
生成AIに具体的に何をしてほしいのかを指示します。これはプロンプトの最も基本的な部分です。
- 例:
- 「〜について説明してください。」
- 「〜というテーマでブログ記事を書いてください。」
- 「〜のアイデアを5つ提案してください。」
- 「〜を日本語に翻訳してください。」
- 「〜のコードを生成してください。」
要素3:形式(Format)
アウトプットの形式を指定することで、目的に合った結果を得やすくなります。文字数や箇条書き、トーンなどを指定しましょう。
- 例:
- 「箇条書きで3つ提案してください。」
- 「500字程度の文章で記述してください。」
- 「小学生にも分かりやすい言葉で説明してください。」
- 「表形式で比較してください。」
- 「〜のようなトーン(例:丁寧、親しみやすい、専門的)で書いてください。」
要素4:文脈(Context)
生成AIにタスクを実行する上で必要な背景情報や状況を伝えます。これにより、生成AIはより適切な文脈で情報を生成できます。
- 例:
- 「これは、20代の女性向けの健康食品のキャッチコピーです。」
- 「このブログ記事は、生成AI初心者向けに書きます。」
- 「あなたは、〇〇会社の広報担当者として、プレスリリースを作成してください。」
- 「現在の日本の経済状況を踏まえて、今後の投資戦略について考察してください。」
要素5:制約(Constraint)
アウトプットに対する制限や条件を指定します。含めてほしくない内容や、必ず含めてほしいキーワードなどを指定しましょう。
- 例:
- 「専門用語は使わないでください。」
- 「ネガティブな表現は避けてください。」
- 「参考文献を3つ以上含めてください。」
- 「〇〇というキーワードを必ず含めてください。」
- 「〇〇という文字数以内で記述してください。」
3. 初心者向け!プロンプト作成の3つのコツ

上記の5つの要素を全て盛り込む必要はありません。まずは以下の3つのコツを意識するだけでも、生成AIからのアウトプットの質は格段に向上します。
コツ1:具体的に、詳しく伝える
生成AIは、あなたが思っている以上に言葉の表面的な意味しか理解できません。「なんとなく」「適当に」といった曖昧な指示では、生成AIも困ってしまいます。できるだけ具体的で詳細な指示を心がけましょう。
- 曖昧な例: 「面白いアイデアをいくつか出して。」
- 具体的な例: 「小学生が夏休みに楽しめる、お金があまりかからない面白い遊びのアイデアを5つ、箇条書きで提案してください。」
コツ2:目的を明確にする
あなたが生成AIに何を求めているのか、最終的にどんなアウトプットを得たいのかを、最初に明確に伝えましょう。目的がはっきりしているほど、生成AIはあなたの意図に沿った結果を出しやすくなります。
- 目的が不明確な例: 「生成AIについて教えて。」
- 目的が明確な例: 「生成AIについて全く知らない人が、生成AIの基本的な仕組みを5分で理解できるような説明文を書いてください。」
コツ3:試行錯誤を楽しむ
一度のプロンプトで完璧な結果が得られるとは限りません。生成AIが出力した内容を見て、「もう少し〇〇な感じにしてほしい」「△△という要素も加えてほしい」といったように、対話しながらプロンプトを修正していくことが、より良い結果を得るための重要なプロセスです。色々なプロンプトを試して、生成AIの反応を見るのを楽しむくらいの気持ちで臨みましょう。
4. NGなプロンプト例:生成AIを困らせるお願い

逆に、以下のようなプロンプトは、生成AIを困らせたり、期待外れな結果につながる可能性が高いです。
- 曖昧すぎる指示: 「何か良いものを作って。」
- 質問が広すぎる: 「世界について教えて。」
- 感情的な言葉や主観的な意見が多い: 「この絵のどこがダメなのか教えて!」
- 情報が不足している: 「〇〇について書いて。」(〇〇が何か不明確)
- 矛盾する指示: 「短くまとめて。ただし、全ての重要な情報を漏らさないで。」
5. プロンプトの進化:さらに上を目指すために
基本的なプロンプトの書き方をマスターしたら、さらに高度なテクニックを学ぶことで、生成AIの可能性を最大限に引き出すことができます。例えば、
- 連鎖プロンプト(Chain-of-Thought Prompting): 複雑な問題を段階的に解決させるためのプロンプトの書き方。
- Few-shot Prompting: 少ない例を示すことで、生成AIに特定のタスクの実行方法を学習させる方法。
- Template Prompting: 特定の形式で繰り返し利用できるプロンプトの作成。
これらの高度なテクニックについては、今後の「AIお助け隊」の記事でも紹介していく予定です。まずは、今回紹介した基本の「キ」をしっかりと身につけて、生成AIとのコミュニケーションを楽しんでくださいね!
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参考情報
- 総務省・経済産業省:AI事業者ガイドライン
- 公益社団法人著作権情報センター:著作権が制限されるのはどんな場合?
- AI総研:生成AIができること9選・できないこと3選|事例や注意点も紹介
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